お見合い求婚~次期社長の抑えきれない独占愛~
「お久しぶりです、九条さん。今日も変わらずお美しい」

柊一朗さんの応対を聞いて、歯に衣着せぬ誉め言葉はこういう状況の副産物だったのか、と納得した。

女性は褒められて当然という顔で高慢に微笑む。

「今日は随分とかわいらしいお嬢さんをお連れのようね」

彼女の興味が突然こちらに向いたので、私は慌てて会釈をした。

一見褒めているようで、その口ぶりは完全に見下したもの。私の頭のてっぺんから足の先まで、品定めするようにじっとりと視線を流す。

「新しい秘書の方?」

観察した結果、彼女が導き出した私と柊一朗さんの関係はそれだったらしい。とても恋人には見えなかったのか、あるいは、認めたくなかったのか。

「お褒めいただきありがとうございます。私の婚約者ですよ」

柊一朗さんの言葉に、その女性の笑みが引きつったのを見て、後者だったのだと悟る。

「それは失礼。柊一朗さんの好みと、随分違うようだったから」

どういう意味? となんだかちょっとムッとしながらも、表面的には笑顔を装う。

それとも本当に、柊一朗さんの歴代の彼女たちは、もっと大人っぽい――それこそ、この女性のようにゴージャスなボンキュッボンレディだったのだろうか……?
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