お見合い求婚~次期社長の抑えきれない独占愛~
「声が大きい」

「もごっ――」

だって、新海商事といえば、誰もが名を知る大企業、それこそ日千興産と名を連ねるような、全世界に拠点を持つ名門企業だ。

私が勤める会社、新海エレクトロニクスも新海グループの子会社である。

ただし、末端も末端。事業内容としては分離されており、親会社とはほぼ接点がない。

「そんな家柄なのに、どうしてうちの会社にいるんですか……?」

「あー……経営とか、興味ないんだよ。家はうるさいが、なんとか理由をつけて逃げ回ってる、今のところは。って、俺のことよりも、問題はあっちだろう」

雉名さんは再び目線を壇上へ向ける。ちょうどスピーチが終わったところで、彼の笑顔に向けて会場から万雷の拍手が巻き起こった。

「お前、知ってたのか? あいつの正体」

「なんとなくは……」

「随分ととんでもない男に手を出したな。あれは厄介だぞ」

自分でもそう思う。今この瞬間に、やっと気がついた。

彼は、私なんかがおいそれと近づいちゃいけない人種だったんだって……。
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