お見合い求婚~次期社長の抑えきれない独占愛~
彼が降壇しても、まだ拍手は鳴りやまない。特に女性は黄色い悲鳴をあげて、降りてきた彼をとり囲んだ。

すると、ひとりの女性が一歩前へ進み出て、柊一朗さんの手をとった。

テレビや雑誌で見たことのある顔――確か有名なファッションモデルだ。

背の高いとびきりの美人で、透け感の強いドレスは禍々しいまでの色気を放っていた。

「……あれは、東原一族の名物令嬢だったか。財界のとんでもない権力者一族だ」

その女性を遠巻きに眺めながら、雉名さんが解説をくれる。

「……知っています。セレブ一家で有名なモデルさんですよね。それから、彼女の兄は――」

日千興産の、現常務。

ぞくっと背筋が寒くなった。あのセクハラ事件を起こした当事者だ。

だからこそ、セクハラ事件が公になったとき、経営幹部は死に物狂いで隠蔽し、常務を守ろうとした。

常務を敵に回すということは、東原一族を敵に回すことを意味する。莫大な財源が失われかねないからだ。

もしかして、常務もこのパーティーに来ているのだろうか。

だとしたら、私の顔を見られるのはまずい。きっと恨まれているに違いないから。
< 221 / 294 >

この作品をシェア

pagetop