お見合い求婚~次期社長の抑えきれない独占愛~
顔を伏せて小さくなっていると、雉名さんは柊一朗さんに視線を向けたまま「見ろよ」と眼差しを鋭くした。

ちらりと目を向けると、柊一朗さんが眩しい笑顔を浮かべながら、ご令嬢の手をとり甲にキスをしたのが見えた。

ご令嬢は柊一朗さんに懐くように手を絡め、エスコートをせがんでいる。

「あの女、独身だと思ったが、もしかしてあいつを狙ってんのかな」

柊一朗さんは絡みついてくるご令嬢の手をやんわりとほどき、その場を去ろうとする。けれど、すがりつくようにうしろから手を回され、困ったような微笑を浮かべた。

「随分と気に入られているみたいだな。まぁ、嫌でも強くは拒めないだろう。彼女を味方につければ、莫大な資産を動かすことが出来る。自分に好意を持たせておいた方が得だ」

ぎゅっと、胸が締めつけられる。

なにも持たない自分、反対に、権力もお金も美貌も兼ね備えた彼女。

もしかして、ああいう女性と結婚した方が、柊一朗さんのためになるのでは……。

なんだかとても心細く感じて、気がつけばそこにあった雉名さんの服の袖を掴んでいた。

とにかく、なんでもいいからすがりたかった。この場から逃げ出したいと思ってしまった。
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