お見合い求婚~次期社長の抑えきれない独占愛~
「東原常務。あの事件の顛末にはたいそう驚かされたよ。私が海外出張へ行っている間に、マスコミや被害者たちには金が配られ、私には事後報告しかなされなかった。
幹部の連中に不信感を抱くようになったのは、あれがきっかけだ。
よくよく調べてみれば、私の目の届かないところで、他社との裏取引を随分と進めてくれていたようだな。バレないとでも思ったか?」

裏取引――それが不正な金銭の流れを意味しているということは、社長の剣幕と常務の強張った表情を見れば火を見るよりも明らかだ。

「日千興産を陰から操るつもりだったか? 浅はかなのはどちらだ、東原常務。先に言っておくが、東原財閥からの支援を断ったところで、我が日千興産は充分生き残れる。自惚れるなよ」

「そん……な……」

驚愕の表情で常務は膝をつき、うなだれる。

「残念ながら私とは違い、息子は潔癖だ。今後、君のような黒い存在を許してはおかないだろう。君が好き勝手出来ていた時代は、じきに終わる。長年の罪を償え」

「償えとは!? バカなことを。そんなことをすれば、社長、あなた自身の身が危うくなるだけです。
私とあなたは一連托生。長い間、あなたは私の行いに目を瞑ってきたのですから。
気がつかなかっただなんて言い逃れは出来ません。私の罪はあなたの罪でもあるのです。会長の世代から、我が社はそうやってのしあがってきたのですから」

「その悪政ももう終わりだ。私が社長という役目を終えると同時に」

「まさか……代替わりされるおつもりですか!? そんな馬鹿な、あなたの年齢なら、あと十年――いや、二十年はやれるはずだ! なぜこんなにも早く――」
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