お見合い求婚~次期社長の抑えきれない独占愛~
常務のうしろ姿を見送ったあと、社長は「面倒ごとがやっと片づいた」と嘆息した。

「あの男は、東原財閥の中でも問題児らしくてな。常々、彼の父親からも相談されていたんだ。好き勝手しすぎだ、とな。これを期に反省してもらおう。もちろん、我が社の役員からは退いてもらう」

そう説明した後、柊一朗さんに向かって、厳しい、けれど信頼に満ちた眼差しを向ける。

「後の始末はお前に任せる。私の代は終わった。好きにやりなさい」

「承知致しました」

柊一朗さんは、凛々しく微笑んで頷く。頼もしくて、清々しい、どこまでもついていきたくなるような力強い表情だ。

「では私もそろそろ最後の努めを果たしに、会場へ向かうとするか」

社長が襟元を正し、部屋を出て行く。貫禄漂ううしろ姿が部屋の外へ消えていくのを、私と柊一朗さんは無言のまま、じっと見つめた。

そして部屋に残ったのは、私と柊一朗さん、そして使用人の田中さん。

「……さて。澪。まずは謝らないといけないな。危ない目に遭わせてすまなかった」

柊一朗さんは私に向き直ると、全身をくまなく眺め、「怪我はない?」と心配そうに眉を下げた。
< 242 / 294 >

この作品をシェア

pagetop