お見合い求婚~次期社長の抑えきれない独占愛~
「うれしいわ。そう呼んでもらえて。柊一朗、ここに連れて来たからには、いい報告があるのよね?」

まるで先を急ぐみたいに、目を輝かせる。

「性急すぎですよ。もう少し気長にお待ちください。少しずつ、結婚に向けて準備を整えているところですから」

「それを聞いて安心したわ」

お母さまはうれしそうに頷くと、今度は私の頭の上から足の先まで、ゆっくりと視線を流していった。

「柊一朗さん、このお着物はあなたが見立てたの? 振袖ではないの?」

「婚約者なんですから、振袖にする必要はないでしょう」

「どうせ悪い虫がついたら困るとでも思ったのでしょう。独占欲の強いあなたらしい考えね。総一さんにそっくり。振袖なんて、今しか着られないのだから、存分に着せてあげればいいのに」

同情めいた眼差しで頬に手を添えて首を捻る。

そんな母親を前に、はいとも言えず、柊一朗さんはわずかにたじろいで苦笑いを浮かべた。

「次に社交の場に出るときは、わたくしが見立ててあげるわ。もっともっと素敵なドレスを着せてあげる」
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