お見合い求婚~次期社長の抑えきれない独占愛~
「母さん。澪は着せ替え人形じゃない」

「今日はご自分が着せ替えをして楽しんでいたくせに、よく言うわ」

そう言ってお母さまは、私の肩を抱いて端に連れていく。

「母さん?」呼び止めた柊一朗さんに、「そこで待っていなさい」とぴしゃりとひと言だけ突きつけて。

お母さまは、ドリンクを差し出したボーイからシャンパンをふたつ受けとると、ひとつを私に手渡して、「澪さん」と眉を下げて微笑んだ。

「壇上に上がる柊一朗の姿を見て、きっと驚いたことでしょう。わたくしも、今でこそ堂々と振る舞っていますが、この家に嫁いだばかりの頃は礼儀のひとつも知らないじゃじゃ馬で、失礼をやらかしては義母からよく怒鳴られたものよ。意外かしら」

お母さまがいたずらっぽく笑う。常務の話では、柊一朗さんのお父さまは良家のご令嬢と結婚したと言っていたが……。

「お母さまは、良家の出身だとお聞きしましたが……?」

「わたくしの実家が良家を気どっていたのは、明治時代の頃よ。それ以降は、ちょっぴり大きなお家を持った、ただの一般市民だったわ」

そう言ってふふふと笑う。この気品は生まれ持ったものだと思っていたのに、まさか自称じゃじゃ馬だなんて。
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