お見合い求婚~次期社長の抑えきれない独占愛~
「本当は抱きしめたいところだけれど、綺麗になった澪を汚すのは嫌だから、俺もシャワーを浴びてからにするよ」

そう言って、彼は私と交代してバスルームへと入っていった。

ひとり、広すぎるリビングにポツンと取り残されて途方に暮れてしまう。

壁にかけられたテレビだけは点いていて、土曜の朝のちょっぴり軽めなニュース番組が、控えめなボリュームで映し出されていた。

ソファに座り、淹れたてのコーヒーを味わいながら、ぼんやりと辺りを眺める。

この部屋を見て、彼に関する謎が余計に深まった。

この豪勢な住まい――しかも、夜間対応のコンシェルジュつきらしい――を維持するだけの給与をどこから得ているのだろう。

本職だという経営コンサルタントの仕事は、そんなに儲かるのかな?

アラブの石油王の右腕だったという噂も、今なら信じられる気がする。

「もしかして、すっごいお金持ちのご令息なんじゃ……」

そうつぶやいて、まさかね、と自分で否定する。そんな人が派遣社員なんてやっているはずがない。
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