天然お嬢様の恋はどこまでもマイペース
「好きなことをさせてもらっていますので、幸せ者だと思います」
これは本心。
大学を出るとき、ちょうど会社の買収話が出た。
いつまで持つかもわからない小さな会社を続けるよりも、大手企業に組み込まれて自分自身もその中で働く方が安定しているのは目に見えている。
誰もが、買収に応じて就職する方がいいと言った。
でも、俺は最後までやり遂げたかった。
賛成してくれたのは、母さんと神谷支店長だけ。
だから、俺はどこまでも走り続けなくちゃいけないんだ。


「田島くん。私たちの育て方がいけなかったのか、爽子は世間知らずに育ってしまってね」
「いえ、そんな」
否定ができない。
「神谷から君のことを聞いて、ぜひ爽子には君のような若者をと思ったんだ」
「高杉さん・・・」
一体、神谷支店長はどんな話をしたんだろう。
俺はそこまで言ってもらうような人間だとは思わないが。

「どうだろう?」
「え?」
いきなりどうだと聞かれ、真っ直ぐ俺を見るお父さんの視線を感じ、言葉に詰まった。
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