天然お嬢様の恋はどこまでもマイペース
「もういいよ」
拗ねてしまった爽子を、そっと抱きしめた。

一瞬驚いた顔をして、それでも俺の背中に手を回してきた。
意外だな。
正直、抵抗されるんじゃないかと思っていた。

頭一つ低い位置から、俺を見上げる爽子と目が合う。

チュッ。
リップ音を立てて口づけをすると、離れていこうとする俺を爽子の方が追いかけてくる。

あれ、なんだか想像と違う。
ひたすら受け身で、お人形のような爽子を予想していたのに。

「泰介」
考え事をしてしまった俺を、爽子が呼び戻した。

ごめん。
言葉にはすることなく、俺は爽子の唇にかぶりついた。
位置や角度を変えながら、息をするのを忘れそうなくらいの口づけ。
それでも、爽子は必死に応えてくれた。
< 96 / 186 >

この作品をシェア

pagetop