ヴァンパイア†KISS
「春の声」が再び会場内に美しい音を鳴り響かせる。

タキシードを着た姿でわたしを振り返ったデュオにさっきまでの強引さは全くなく、紳士のようにわたしの片手を上へ差し伸べ、もう一方の手をわたしの背中に添えると。

バイオレットの瞳で、わたしだけを見つめた。

トクン………!

首筋のキスの刻印がうずくように熱を帯びた。

デュオが欲しくて堪らない。

これは、キスの魔力なの……?

この想いも刻印が消えるとともに、消えてなくなってしまうのだろうか?

わたしはこの気持ちが消えたらどんなに楽だろうと思いながらも、消えて欲しくない気持ちで胸は2つに張り裂けそうだった。

デュオはきゅっと唇を結ぶと、

「お前の踊りたいように踊っていい」

そう言って美しいホールドの姿勢から、ステップを踏み始めた。

一瞬、自分の体が鳥になった感覚に、わたしは驚きでデュオを見上げた。

「デュオ……!」

「ワルツは舞う心だ。自由に羽ばたく鳥のように、軽やかにその心を空へと舞い上げる」

デュオは時には、ひばりのように、時にはカナリアのようにステップを踏むと。

そのままわたしを舞わせるようにターンさせた。

不思議な感覚だった。

デュオと踊るたびに、心が軽くなる。

空を舞う鳥のように瑞々しい気持ちが胸の中に溢れてきた。

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