【完】俺の隣にいてほしい。
見た瞬間、思わず胸の奥がじわっと熱くなった。


なんだよあの女。去っていったかと思ったら、わざわざこんなの買ってきたのか?


見知らぬ俺のために?


信じらんねぇ。どんだけお人好しなんだよ。


だけど、そんな通りすがりの彼女の優しさは、身も心もボロボロだった俺の胸にひどく染みたらしく、内心感激している自分がいた。


やさぐれていた気持ちが、一気にほぐれていくような気がして。


誰もが見ないふりをして通り過ぎていく中、見ず知らずの俺なんかのことを心配してくれた彼女。


そんな優しい彼女の顔は、俺の脳裏にしっかりと焼き付いた。


そう。それが心音との最初の出会いだった――。



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