貧乏姫でもいいですか?(+おまけ)
近くの女官を捕まえてそう聞いてみると、振り返った彼女は瞳を輝かせて教えてくれた。

「頭中将と碧の月君がお渡りになるのよ」

「えっ!」と声をあげた緑子には、それだけでこの騒ぎの理由がわかったらしい。

相変わらず不思議そうに眉をしかめる花菜に教えてくれた。

「頭中将と碧の月君といえば、当代きっての麗しい公達よ」
「そうなの?」

「東宮はもちろんなのだけれど、源李悠さま、碧の月君、頭中将、そして陰陽師の藤原蒼絃さま。この五人の方は女性の憧れの的なのよ」

「蒼絃さまもそこに入っているの?」

「もちろん。神々しいほどに美しいもの」

「待って、蒼絃さまのことなら知っているわ。宮中に来る牛車にご一緒させて頂いたの」
「なんですって!」

「ち、違うわよ。ふたりだけじゃなくて、妹君の朱鳥姫もご一緒に」
「ええ? あの美しい舞を舞われると有名な朱鳥姫と?」

「うん、まぁ」

「どういうこと? どうして、そんなに親しいの?」

じりじりと詰め寄ってくる緑子の迫力に押されて一歩一歩と後退するうちに誰かに裾を踏まれたらしい。

「花菜っ」

慌てて手を伸ばした緑子の手は届かない。

「きゃあ」という悲鳴と共に、花菜は御簾をはみ出して濡れ縁に転げ出た。
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