貧乏姫でもいいですか?(+おまけ)
「か、花菜」
緑子の声が小さく震える。

水を打ったように静まりかえるそこで、花菜の瞳に映ったのは鮮やかな紅に重なる白い袴(はかま)。その上には、袍(ほう)と呼ばれる黒い表着。

衣には光りの加減で色が変わる鮮やかな蝶の文様が浮き出ている。

そして、仄かに鼻孔をくすぐる、甘く妖艶な香り――。

見上げたそこにいたのは、黒い束帯姿の公達。
冠から流れる纓(えい)が揺らめいている。

切れ長の目元を微かに歪めて、美しい公達が、花菜を見下ろしている。

纏う空気が冷たい。
まるで、寒空に浮かぶ青い月のような……。

――碧の月君?

その視線は、冷え切った氷のようにグサリと刺さる。
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