貧乏姫でもいいですか?(+おまけ)
「私は冷淡な人は嫌。優しい人がいいわ」
花菜はそう答えながら、ふと思い出した。

小鞠と東市へ買い物に出かけた時、酔って絡んで来た男たちが言っていたことを。

『我らは橘家、碧の月君の家の者。知った上で無礼を申すか』

――あの人があんな風に高慢でいけ好かない奴だから、下の者まであんなに感じが悪かったんだわ。
いくら家柄のいい綺麗な公達だとしても、あんな男はまっぴらご免よ。

それに比べ。あの人は素敵な人だった。

そう思いながらそっと手を見る。

頭中将に触れた手……。

考えてみれば男性の手に触れたのは、父や嗣爺を覗けば初めてのこと。
あんなに近くで男性の顔を見たのも多分初めてだ。

穏やかで優しい笑顔を思い出し、まるで心臓の鼓動が手に伝わったようにドキドキと手のひらが熱くなった気がした。
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