貧乏姫でもいいですか?(+おまけ)
それから間もなくのこと、花菜が碧の月君を嫌う決定的な出来事があった。

弘徽殿の女御さまに届け物の用事を言いつかって、ひとりで出向いた時のことだ。

几帳の向こう側から男性の声が聞こえてきた。

声の主は碧の月君。
月君は、弘徽殿の女御さまの弟君である。

彼らの父は左大臣まで上り詰めたが、まだまだこれからという時に若くして数年前に他界してしまった。

それでも女御さまへの帝の寵愛は深く、ふたりは顔だちもよく似ているということもあって碧の月君がその若さでありながら権大納言という破格の待遇に繋がっている。

――さて、どうしよう。

見える位置に女御付きの女房の姿はない。

かと言って碧の月君がいる以上、これより先に近づくは憚れる。
どうしたものかと迷ううちに、話が聞こえてきた。
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