貧乏姫でもいいですか?(+おまけ)
今日のお菓子のメニューは決めてある。
パンケーキだ。

ベーキングパウダーがないので、卵の白身でメレンゲを作ってふんわりとさせることにした。少し甘みをつけたメレンゲに卵黄と牛乳を混ぜて、小麦粉を混ぜる。

まずは味見用に小さくバターで焼いて――。
どれどれと味見をする。

花菜の頬に満足げな笑みが浮かんだ。

――冷めないうちにホイップクリームとハチミツをかけて食べて頂かなくちゃ。

紅茶にも工夫をこらした。
乾燥させておいた蜜柑の皮でフレーバーティにした。

出来立てのパンケーキを携えて膳司の女官、右近(うこん)と一緒に弘徽殿に向かうと、途中、角を曲がりこちらに向かって歩いて来る公達の姿が見えた。

すらりと背が高く、遠目にも美しい若い公達であることがわかる。

隅に寄り、さらり、さらりと擦れる衣の音が近づいてくるのを感じながら、花菜は更に深く顔を落とした。

すれ違いながら、公達が残してゆく薫香を敏感に感じ取れば、それは丁子の中に漂う伽羅の豊かな甘い香り。
碧の月君も甘い香りがするが、月君の場合は動物的な麝香(じゃこう)だ。

ということは、今通り過ぎたのは……。

――頭中将。
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