貧乏姫でもいいですか?(+おまけ)
「蒼絃は何か食べたことがあるのか?」

「きのこがたっぷりと入った味噌仕立ての汁物とか、焼き菓子とか」

「へえ」

蒼絃は静かに「今は心配ないが」と言いながら、立ち上がった。

「間もなく花菜姫は嫉心の闇に襲われる。その悪意を、碧き月が照らし出すのか、黒き鬼が払うのか……」

歌うようにそう言いながら、蒼絃は御簾をくぐる。

呆気にとられたようにその後ろ姿を見送った頭中将は、「相変わらず、意味がわからないが」と首を振った。

「花菜姫には、何かよくないことが起きるということか?」

脇息に肘をかけたまま、蒼絃の言葉の意味をしばらく考えていた李悠は、こめかみに笏を当てて言った。

「そういうことだろうな。とりあえず気にかけておくか……」

頭中将も神妙な顔をして頷いた。

謎かけのようではあるが、少なくとも陰陽師藤原蒼絃の言うことは、よく当たるのだから。
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