貧乏姫でもいいですか?(+おまけ)
障子ではなく、しっかりとした土壁に囲まれているそこでは、警備員のように立っている男性がいた。

「御用件は?」

「中にいらっしゃる藤原の朱鳥姫に会いに来たのですが」

「ああ、その方ならちょうど中にいらっしゃる」

「ありがとうございます」

扉を開けると、なるほどそこは校書という名がついているだけあって様子が違っていた。
書物を管理するところだけあって棚が並んでいる。

薄暗い中を、言われた通り見渡すと朱鳥姫がいた。

彼女だとわかったのは、十二単の衣擦れの音に気づいた朱鳥が、振り返ったからである。

「あら」

「ようやく遊びに来れました。はいお土産の唐菓子です。弘徽殿の女御さまからの頂き物ですが」

「まあ、ありがとう。ちょうどよかったわ、休憩しようと思っていたの」

ふたりは校書殿を出て、中庭を囲む濡れ縁に出た。
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