貧乏姫でもいいですか?(+おまけ)
帽子なら髪も隠せるが、風変り過ぎてかえって人目を引いてしまう。
となると市女笠を被るしかないわね。
よし、決めたわ。


「嗣爺、どう? これならいいでしょう?」

市女笠を被った花菜は、嗣爺の前でクルッと回って見せた。

着物は奥の方で眠っていた地味で古い衣である。

笠は花菜の若々しい顔を隠しているので、全体から想像させるのは、どこかに仕えている女房というところだろう。
少なくとも、貴族の姫には見えない。

嗣爺はやれやれとあきらめたようにため息をついたが、それでも最後の提案を忘れなかった。

「殿さまにご一緒して頂いてはどうですか?」

「だめよ、この前みたいに人混みに酔っちゃったら、かえって困っちゃうもの」

花菜の父はすっかり引きこもりなので、人混みが苦手だ。
つい最近も、嗣爺とふたりで出掛けたはいいが、目が回ると言ってすぐに帰って来てしまった。

「大丈夫。女たちだけの買い物客だって普通にいるでしょ? それにほら、こんな格好なら攫われる心配もないと思わない?」

花菜だけではない。小鞠も、目立たない着物を着ていた。

「馬鹿にされるほど酷い格好でもないし、いい感じでしょ?」

花菜の熱意に押され、嗣爺もしぶしぶ了解した。

「くれぐれもお気をつけて」

「はーい」
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