貧乏姫でもいいですか?(+おまけ)
あの人が人鬼丸なのね! と、思ったのもつかの間。

「人鬼丸は山の中に住んでいるの?」

「洞穴にいるらしいな。全身黒づくめだから、洞穴に入ったらわからないだろうさ」

もし洞穴に住んでいるとしたらそれは彼ではないと思った。

――あの人は洞穴に住んでいるようには見えなかったわ。黒い衣装も汚れてはいなかったもの。

結局、あの黒装束の男が人鬼丸だという確信できる話は聞くことができなかった。


気のいい店主はおにぎりを買ってくれただけでなく、小魚の干物をサービスしてくれた。

「ありがとう、おじさん」

「また持ってきな。いつでも歓迎だよ」

これで今日の買い物の資金源になる銭が手に入った。
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