貧乏姫でもいいですか?(+おまけ)
「安いよ! うちの布は出来が違うからね!」

掛け声を響かせる女商人は、貧乏貴族よりもよほどいい暮らしをしているのだろう。
声に力もあって、体もよく肥えている。

「す、すごいですね」

小鞠などは、その迫力に圧倒されて怯えているようだ。

「負けちゃだめなのよ。あれを値切るから、見てなさい」

そう言って胸を張った花菜は、小鞠の手を引き女商人のもとへと向かった。


「はい、いらっしゃい」

愛想のいい笑みを浮かべながら、女商人は抜け目なく、品定めをするように花菜に目を走らせる。

「よく出来てるわね、この布」

「ええ、そりゃもちろん。キレイなだけじゃなくて丈夫ですよ。綿もたっぷり入っているからね、とっても暖かいですよ」

「これは?」

「ああ、これは、さる上級貴族の方が召されていた物で」

商品が並ぶ棚の一角に、反物ではなく既に刺繍や染が施されているいわゆる古着の着物がある。
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