貧乏姫でもいいですか?(+おまけ)
上級貴族は、着物を洗って繰り返し着るようなことはしない。飽きたり汚れてしまったりした物は、下級貴族などにあげてしまうのだ。
それが流れ流れて、この女商人の手に入ったものなのだろう。

手にとってみると、ほとんど手を通していないようなものもある。理由は見てわかった。裁縫や染の出来があまりよくない。

「これとこれと」

花菜は両親用にと、いくつか見繕った。

そして、背中に背負ってきた包みのひとつを取り出す。

「これでどうかしら」

それは、花菜が自ら染めた美しい反物二種。
上級貴族の女房たちに高く売りつけることが出来るであろう、自信作である。
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