貧乏姫でもいいですか?(+おまけ)
花菜から受け取った布を、まじまじと見つめた女商人は、一瞬瞳を輝かせたが「お客さま、これだけではちょっと」と渋る。

「そう、残念。他で見るわ、ありがとう」

花菜がそっけなく古着を手放すと、女商人は簡単に折れた。

「わかりましたよ、お客さま」

「あら、そう。じゃあこれも付けてくれる?」

花菜はもう一つ手に取った。
絶対に売れなさそうな古びた女性物の着物である。

やれやれとため息をついたが、女商人は取引に乗った。

「おまけしておきますよ。あんた、貴族のところなんかで働いてないで、うちで働いたらどうだい」

「ふふ、ありがとう」
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