桜の城のノクターン
「ミサちゃんのことを聞くとは、なかなかやりますねぇ~。今日は機嫌が悪いようで、お部屋にいるそうです~。エスメラルダ嬢がいらっしゃるときは大体奥にいますよ~」
そういうと、抱えていた書類をドサッっと机に広げた。
「さて、エスメラルダ嬢の用件はこちらでよろしいですかぁ~?」
先ほどの他愛のない会話しかしていないにも関わらず、紹介屋はエスメラルダが来た用件を分かっているようだった。
エスメラルダは、ちらっと書類を見ると、いやな顔をした。
「そのとおりすぎて嫌になるわ。なんで、私の知りたいことが分かるのかしらね?どこかに盗聴器でもついているのかしら?」
といって、自分の身の回りを見渡す。
「まぁ、私もこれが仕事ですから~。気にしないでくださ~い」
その態度に少々ムッとしたが、諦めているようで、それ以上の反論はせず、黙って書類に目を通し始める。
その様子を見届けると、満足そうな顔をし、紹介屋はフェニルに向き直る。
「フェニルさんの用件は、昨日の依頼に関してでしょうかぁ~?」
フェニルは素直に頷く。