紫陽花のブーケ

洩れ始めた嗚咽にますます思考が遮られ、しゃくりあげながら震え出すと、背中から私を包みこんでいた腕の力が一層強くなって、少し上向いていた首筋に温かいものが沁み込んでくる

その正体に気づいたら、胸がいっぱいになってますます涙が止められなくなる


「…ごめん、辛い思いさせた――」


まるで縋るように私を抱く人の漏れる声も震え、くぐもっている


「もう一人にしないから、これからずっと、子どもも美季も守るから」



ーーー私を父親にしてくれないか


わたしの中に燻っていた想いが堰を切って溢れ出した



彼の腕の中でクルリと向きを変え、ずっと欲しかった温もりにしがみつく

秋元さんの手が、宥めるようにゆっくりわたしの背を撫でおろしつつ、反対の手は腰をそっと引き寄せた

お腹の子に気遣ったのか、それは愛し合う時の様な息もできないほど力強さはないものの、二人の間に僅かな隙間すら許さないというように、私たちはぴったりと寄り添い、互いの温もりを確かめるように抱き締め合った



霧のようにたゆたっていた雨は既に上がり、雲の隙間から降りてくる陽の光が、二人を祝福するかのように降り注ぐ

雨に濡れた紫陽花に染められた雫がまるで色とりどりのビーズのように光り輝く中、二匹の蝸牛が寄り添いながらゆっくり歩んでいったーーー


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