闇の果ては光となりて
-霧生-
昼過ぎに、怪我をしたから来てくれと舞美から連絡を受けた。
浮かない気持ちのまま、行かないという選択肢のない俺は、神楽の迎えをコウに頼み込んだ。
「コウ、悪いが、神楽の迎えを代わってくれねぇか」
「はぁ? どういう事だよ」
机に突っ伏していたコウが顔を上げ、怪訝そうに俺を見る。
「今から舞美の所に行く」
「ああ、そうかよ。神楽より、クソ女な。行け行け。神楽は俺に任せときゃいいぜ」
投げやりに返ってきた言葉に、
「悪りぃ」
と返した。
俺を睨み付けるコウの瞳は、大概にしろよと言ってるような気がした。
言われなくても、俺が一番大概にしてぇんだよ。
本当は、もうこんな事続けたくねぇ。
バイクを飛ばして舞美の家まで行けば、あいつは陽気に俺を1人暮らしのその部屋に迎え入れた。
目の前でトリートメントされた腰まですらりと伸びたブラウンの髪がサラサラと揺れる、モデルかと見紛うぐらいに整った顔付きをした舞美が微笑みを浮かべていた。
怪我なんてした様子はどこにもない。
こいつ、怪我したんじゃねえのか。
「怪我は?」
「ウフフ、料理をしてて指を切っちゃった」
絆創膏を巻き付けた左手の人差し指を、俺の目の前に突き出して、悪びれる様子も無くペロリと舌を出した舞美。
チッ···電話して呼び出す程の物じゃねぇだろ。
「それぐらいなら、連絡してくんな。俺は学校に行ってんだ」
「だって痛かったのよ。それより、お昼を作ったの。一緒に食べましょう」
俺の手を引き奥へと引っ張っていく舞美の背中に嫌悪感が湧いた。
神楽とは違って、舞美の手からは温かさを感じない。
こいつを好きだと思えなくなったのは、何時だった?
そう思うのに、危ういコイツを見捨てらんねぇのは、幼い頃からの情かもな。
綱渡りの様に生きてた昔の俺を支えくれてたのは、確かに舞美だったはずなのに、どうしてこうなっちまったんだろうな。
2つ年上の近所の幼馴染。
15歳の多感な時期に側にいた舞美の誘惑に乗ったのは、好奇心が勝ったからだ。
2つ年上の遊びなれてた舞美に、憧れも少なからずあっだろう。
親父と上手く行ってない俺に、気晴らしで遊ぼうと言ったのは舞美だった。
その時、こいつには遊び相手が何人かいて、俺もその1人のはずだった。
遊びのマナーとして避妊には気をつけてた。
あの日···親父と喧嘩してむしゃくしゃしてた俺を飲みに誘った舞美に、睡眠薬入りのアルコールを飲まされ、気が付いたら避妊具も付けずに舞美と交わってた。
それから少しして子供が出来たと言われ、舞美にハメられたと思ったけど、、避妊をしていたとはいえ舞美とそう言う行為をしていた自分にも非がある事を認め、男としての責任を取るつもりで、舞美と正式に付き合いだした。
あの時は、それなりに幸せになれるんじゃねぇかと思ってた。
俺が18歳になったら籍を入れようと2人で決めた矢先に、舞美は流産した。
子供を失って失意に暮れる舞美を、支えていかなきゃなんねぇって思ってた。
腹に子供が居なくなったからと言って、俺のやった事の責任がなくなる訳じゃねぇし、舞美が望むなら一生側にいようと決めたんだ。
昼過ぎに、怪我をしたから来てくれと舞美から連絡を受けた。
浮かない気持ちのまま、行かないという選択肢のない俺は、神楽の迎えをコウに頼み込んだ。
「コウ、悪いが、神楽の迎えを代わってくれねぇか」
「はぁ? どういう事だよ」
机に突っ伏していたコウが顔を上げ、怪訝そうに俺を見る。
「今から舞美の所に行く」
「ああ、そうかよ。神楽より、クソ女な。行け行け。神楽は俺に任せときゃいいぜ」
投げやりに返ってきた言葉に、
「悪りぃ」
と返した。
俺を睨み付けるコウの瞳は、大概にしろよと言ってるような気がした。
言われなくても、俺が一番大概にしてぇんだよ。
本当は、もうこんな事続けたくねぇ。
バイクを飛ばして舞美の家まで行けば、あいつは陽気に俺を1人暮らしのその部屋に迎え入れた。
目の前でトリートメントされた腰まですらりと伸びたブラウンの髪がサラサラと揺れる、モデルかと見紛うぐらいに整った顔付きをした舞美が微笑みを浮かべていた。
怪我なんてした様子はどこにもない。
こいつ、怪我したんじゃねえのか。
「怪我は?」
「ウフフ、料理をしてて指を切っちゃった」
絆創膏を巻き付けた左手の人差し指を、俺の目の前に突き出して、悪びれる様子も無くペロリと舌を出した舞美。
チッ···電話して呼び出す程の物じゃねぇだろ。
「それぐらいなら、連絡してくんな。俺は学校に行ってんだ」
「だって痛かったのよ。それより、お昼を作ったの。一緒に食べましょう」
俺の手を引き奥へと引っ張っていく舞美の背中に嫌悪感が湧いた。
神楽とは違って、舞美の手からは温かさを感じない。
こいつを好きだと思えなくなったのは、何時だった?
そう思うのに、危ういコイツを見捨てらんねぇのは、幼い頃からの情かもな。
綱渡りの様に生きてた昔の俺を支えくれてたのは、確かに舞美だったはずなのに、どうしてこうなっちまったんだろうな。
2つ年上の近所の幼馴染。
15歳の多感な時期に側にいた舞美の誘惑に乗ったのは、好奇心が勝ったからだ。
2つ年上の遊びなれてた舞美に、憧れも少なからずあっだろう。
親父と上手く行ってない俺に、気晴らしで遊ぼうと言ったのは舞美だった。
その時、こいつには遊び相手が何人かいて、俺もその1人のはずだった。
遊びのマナーとして避妊には気をつけてた。
あの日···親父と喧嘩してむしゃくしゃしてた俺を飲みに誘った舞美に、睡眠薬入りのアルコールを飲まされ、気が付いたら避妊具も付けずに舞美と交わってた。
それから少しして子供が出来たと言われ、舞美にハメられたと思ったけど、、避妊をしていたとはいえ舞美とそう言う行為をしていた自分にも非がある事を認め、男としての責任を取るつもりで、舞美と正式に付き合いだした。
あの時は、それなりに幸せになれるんじゃねぇかと思ってた。
俺が18歳になったら籍を入れようと2人で決めた矢先に、舞美は流産した。
子供を失って失意に暮れる舞美を、支えていかなきゃなんねぇって思ってた。
腹に子供が居なくなったからと言って、俺のやった事の責任がなくなる訳じゃねぇし、舞美が望むなら一生側にいようと決めたんだ。