相思相愛ですがなにか?

「今……?」

「だって!!いつ伊織さんの気が変わってしまうか分からないじゃない?どんなに頑張って誘惑しても伊織さんってば全然なびいてくれなかったもの!!」

月子ちゃんは拗ねたように口を膨らませ、俺をジロリとひと睨みしたのだった。

「それは……!!婚約したばかりの月子ちゃんに嫌われたくなくて……」

「私、伊織さんのこと嫌いだなんて一度も言ったことないし、思ったこともないわ」

最初から計画づくで婚約したというのならば、散々困らされた、あれもこれも、すべて俺を誘惑するために実行されたものだったのか。

やはり、月子ちゃんは侮れない。

「お願い……不安なの」

そして、今……。

月子ちゃんは俺のツボを的確についてきている。

甘えるように擦り寄られ、愛をもって耳元で囁かれる。

月子ちゃんにこんな風にお願いされて果たして断れる男がいるのだろうか?

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