相思相愛ですがなにか?

(あれ?これからどうすればいいんだっけ?)

なにせ、経験がなければ、これが正解というマニュアルもない。

私がまったく集中出来なくなったことを汲み取ったのか、伊織さんがふっと表情を緩め優しく微笑む。

「やっぱり……やめておこう?」

「なんで……」

中止を告げられ、私はまた泣きそうになってしまった。

伊織さんは私の衣類の乱れを綺麗に整えると、駄々をこねる私に優しく言い聞かせるのだった。

「俺は月子ちゃんの気持ちが分かっただけで十分だから。初めてなんだろう?大事にしてあげたい。それに……」

「それに?」

「このまましたら色々と我慢できそうにない。俺にも心の準備が必要だ」

伊織さんが照れ隠しのように口元を手で覆うと、つられて私の頬も真っ赤に染まった。

< 230 / 237 >

この作品をシェア

pagetop