相思相愛ですがなにか?

顔合わせといっても仲人もいない、私とお兄ちゃん、伊織さんと3人きりの至って簡素な会である。

自然と砕けた雰囲気になるのは無理もない。

ちょっとイラっとするけど、お兄ちゃんについて来てもらって助かった。

友人の妹という立場に甘んじていた頃ならともかく、結婚するとなった今はまともに会話できるとは思えない。

ほうっと安堵のため息をついたのも束の間、隣に座っていたお兄ちゃんはあくびをかみ殺しながらとんでもないセリフを吐いたのである。

「それじゃ、あとは若いお二人でどうぞ」

背もたれを利用して大きく伸びをすると、用が済んだと言わんばかりに椅子から立ち上がり帰宅の途につこうとしているではないか。

(嘘でしょ!?この状況で帰る気!?)

縁談をまとめた張本人のくせに、放置して帰るなんて冗談じゃない。

「ちょっと待った!!」

「ちょっと待って!!」

私と伊織さんはほぼ同時にお兄ちゃんを引き留めるために声を上げたのだった。

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