相思相愛ですがなにか?

「そんなに急いで帰る必要はないじゃないの、お兄ちゃん!!」

「そうだぞ、冬季緒!!まだ来たばかりじゃないか!!ゆっくりしていけよ、な?」

「は?なんだよ急に!!」

行かせてなるものかとこれでもかとお兄ちゃんのスーツの裾を引っ張るのは私。

お兄ちゃんの好物でもある甘味……自分にあてがわれた羊羹を楚々と差し出すのは伊織さん。

ふたりがかりで抵抗してみても、不機嫌丸出しの鬼の形相のお兄ちゃんは止まらない。

「知らない仲じゃないんだし、自分たちで話せよ!!俺はお前らの縁談をまとめるために駆けずり回って疲れてんだ!!寝かせろ!!」

お兄ちゃんは置き土産のようにそう吐き捨てると問答無用で伊織さんの分の羊羹をパクパクと口に入れ、ピシャリと扉を閉め帰って行ってしまった。

いつもより目の垂れ具合に磨きがかかっていると思ったら寝不足だったのね。

文句を言いながらもこの場を設けてくれたお兄ちゃんに心の中で感謝する。

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