極上御曹司は契約妻が愛おしくてたまらない
「相変わらず暗がりが好きだな」
貴行がライトのスイッチを押すと、男は眩しさで目をくらませた。
彼の名は藤谷誠(ふじたに まこと)。貴行の幼馴染である。
ツキシマ海運の本社内にいるが、社員ではない。
「首尾はどうだ?」
「俺を誰だと思ってる?」
ずらりと並んだコンピューターの前まで歩きながら貴行が尋ねると、質問で返してきた。
「家出人クラッカーといったところか」
鼻をふふんと鳴らしながら答える。
「聞こえが悪いな。家出は昔だし、〝元〟クラッカーだ」
誠の家は代々続く華道の家元だが、その昔、後を継ぐのを拒否した彼は家出同然で飛び出した。
そのあとは得意のコンピューター技術を使ってクラッカーとして闇の世界で有名になったが、あるときを境にホワイトハッカー――コンピューターやネット環境に関する知識を善良な目的に活かす者――に鞍替え。