極上御曹司は契約妻が愛おしくてたまらない

今は類稀なるその〝指先〟で大企業を相手にセキュリティシステムを構築している。

誠はキャスター付きの椅子を滑らせ、真ん中のコンピューターの前に陣取った。
スクエア型の黒縁メガネにモニターの光が反射する。

大型化と電子化が急速に進んでいる海運業界では、航海だけでなく港での迅速な荷下ろしや取り扱い、追跡までシステム連携が図られるようになった。

そのいっぽうで、サイバー脅威に対しては対応が遅れているのが現状。
危うい綱渡りのような脆弱なシステムは、いつ何時サイバー攻撃をされてもおかしくない状態なのだ。

実際、公表こそされていないが被害が何件か確認されている。

被害が公にされないのは、金銭を失うよりも評判を重視するためである。もっとも、脆弱なシステムゆえにハッキングされたことに気づかない業者も少なからずあるだろう。

実は五年前、ツキシマ海運では、輸送途中の船舶が大型タンカーと接触するという海上事故があった。航海士のヒューマンエラーが原因として処理され、責任を感じた彼は一ヶ月後に自らその命を絶ってしまった。

ところがその後の調査で、システムに侵入された形跡が見つかったという苦い過去がある。

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