極上御曹司は契約妻が愛おしくてたまらない
世界の輸送の九十パーセントは海上で行われている。
ハッキング一件あたりの被害額は数百万ドルにも及ぶと言われ、場合によっては国家経済を破綻させる可能性もはらむ。
貴行はツキシマ海運の社長に就任したときから、どんな小さな〝ネズミ〟の侵入も許さない、強力かつ緻密なシステムを構築させようと考えていた。
そんな矢先。情報システム部からハッキングの痕跡があると報告があり、貴行は急いでマルタ島へ飛んだ。そこで悠々自適に暮らすホワイトハッカーとして名高い幼馴染、誠に会うために。
地下のこの部屋は急ごしらえではあるが、ツキシマ海運の未来を担う、いわば重要な砦。社内でも秘密裏に進められている。
「六月最初の日曜日は予定を空けておけよ」
「なんで」
ぶっきらぼうな返答が誠の口から飛び出す。
「話しただろう? 俺の結婚式だ」
「あぁ、マルタ島で見かけた例の彼女が相手だったな。でも俺、お前の母親はともかく、伯母さんが苦手なんだよな」
「そう言うな。幼馴染の仲だろ?」