極上御曹司は契約妻が愛おしくてたまらない

肩をすくめながら小さくボソッと答える。


「えええ!? 陽奈子ちゃん、結婚するの!?」


早紀は、店中に響き渡る大音量の声をあげた。
オープン前でよかったとつくづく思わされる。
いくら店の奥のスタッフルームといっても、店内にまで聞こえるほどの大きな声だったのだ。


「だって彼氏いないって」
「そうですよね。いませんでした」


今も彼氏ではない。それをすっ飛ばして、いきなりフィアンセ。いや夫になる人だ。


「家の都合で急きょそうなりまして……」
「政略的なもの、ってこと?」
「そう、なりますね。はい」


早紀はこれ以上ないほどに驚き、今にも椅子から転げ落ちそうになる。
大和にいたっては、口をあんぐりと開け激しい瞬きを繰り返した。


「お相手はどんな方? 家同士ってことは、えっ、もしかして陽奈子ちゃんってお嬢様だったの?」
「いえいえ、私はそんなんじゃないです。小さな工場の娘ですので」

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