極上御曹司は契約妻が愛おしくてたまらない
(あれ? この靴……)
スエードのタッセルローファー。どこかで見た記憶がある靴だった。
手を止めて視線を上げていく途中で日本語が降ってくる。
「お人好しさん、今日はここでなにを?」
(〝お人好しさん〟? 〝今日は〟? まさか……!)
嫌な予感を抱きながら声の主の顔を見た瞬間、陽奈子はボールが弾むようにピョンと立ち上がった。
嫌味なほどに容姿端麗。昨日の男だったのだ。
バレッタの街並みにふさわしい涼しげな笑みを浮かべていた。
「……あ、あなたには関係ありませんから」
つい眉間に皺が寄り、つっけんどんな言い方になる。昨日こてんぱんにやり込められたから仕方がない。
「それに、私の名前は〝お人好し〟じゃないです」
「じゃ、なに?」
「倉沢陽奈子という名前がちゃんと」