極上御曹司は契約妻が愛おしくてたまらない
(――まさか、迎えってあの車?)
毎日、貴行を送迎している運転手つきの車とそっくりだった。
「陽奈子ちゃん、そろそろあがっていいよ」
たまに人手が足りずに残業をお願いされることもあるけれど、今日は前もって用事があると伝えていたため、大和が気遣って声をかけてくる。
「はい。ありがとうございます」
そう答えたところで、窓ガラスの向こうによく見知った姿が現れる。貴行だった。
夕刻を迎えて薄紫に染まりつつある空のもと、大勢の人が行き交う中でもその姿は人の目と心を惹きつけてやまない。
店の自動ドアが開くと、店内にいたお客もいっせいにそちらを見ずにはいられないようだった。醸し出す空気感がそうさせるのだろう。
ジャケットは車に置いてあるのか、ボタンダウンのワイシャツにブラックのベスト姿は、貴行をより魅力的に見せる気がする。
引き締まった身体が容易に想像できるタイトなシルエットだ。