極上御曹司は契約妻が愛おしくてたまらない
「嘘……」
早紀がポツリと呟くのを片方の耳で聞きながら、陽奈子はカウンターの中でぼうっと突っ立った。
迎えによこすと言っていたから、貴行本人がここへ来るとは思ってもいなかった。意表を突いた登場と、周りの空気も華やかに変えてしまうオーラに時間が止まった感覚だった。
「陽奈子、もうあがれるか?」
悠然とした立ち姿で、軽く首を傾げる。
「は、はい!」
小学生のような元気な返事になり、決まりが悪い。店内すべての視線を浴びているのを感じずにはいられなかった。
「では、お先に失礼します」
スタッフルームで着替えを済ませ、そそくさと外へ出る。車のそばで立って待っている貴行のもとへ急ぐと、運転手が後部座席のドアを開けた。
貴行がこの車に乗り込むところは毎朝見ている。しかし自分がそこに乗るのは初めてだ。