極上御曹司は契約妻が愛おしくてたまらない

貴行が顔を歪め苦々しく呟く。


「いえ、なんとか逃げました。でもその後それが噂になって、私に無理やり誘われたと……」
「それで辞めることになったのか」


コクンとうなずき、目を伏せる。

貴行から、なんとも言えない空気が漂ってきた。
陽奈子に隙があったのでは?と思われたかもしれないと考えると、いたたまれなくなる。そんなふうに思ってほしくない。


「どこに勤めていたんだ?」
「……システムティービズという外資系のIT企業です。専務秘書だったのですが」
「システムティービズ?」


貴行の目の奥が光ったように見えた。


「で、でも、もう昔のことですもんね。ごめんなさい、変な空気にして」


わざと明るく言って、なんてことのない過去だと強調する。

陽奈子は気を取り直して、運ばれてきたアミューズであるエビとオイルサーディンのカナッペにナイフを入れた。

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