極上御曹司は契約妻が愛おしくてたまらない
「それなのにどうしてなの? 陽奈子ちゃんのお父様の借金は肩代わりするっておかしくない? それなら私とだって結婚できたはずでしょう? 借金はよくて、不正はダメなの?」
「それは……」
陽奈子たちが利害しかない政略結婚だと信じている早紀に、本当は違うのだと言うのは躊躇われた。
それからの早紀はだんまりを決め込み、口を閉ざしてしまった。
スマートフォンを返してほしいと訴えても、静かに首を振って答える。
どこへ行くのか、なにをするつもりなのか、陽奈子には見当もつかない。
ただわかっているのは、陽奈子と貴行の結婚に早紀がひどく傷ついていることだけだった。
二時間ほど走り、車は森の中のコテージのような建物の前に停められた。
真夏の午後八時。日は落ち、あたりはすっかり夜の闇の中にある。
約束した店に行かず、貴行は今頃心配しているだろう。
車の中でも何度か着信のメロディが鳴っていたから、きっと貴行に違いない。
「ここ、うちの別荘なの」