極上御曹司は契約妻が愛おしくてたまらない

元とはいえ都市銀の頭取にふさわしい所有物だ。
早紀に促されて木製の階段を上がると、センサーライトが灯った。

バッグから鍵を取り出し、ドアを開ける。
背中を押されて中に入ると、空気の淀みをほとんど感じない。普段から使われているように思われた。

廊下を真っすぐ進んだ先にリビングが現れる。
隅に暖炉があり、切り株を加工して作った大きなテーブルと布地のソファが並んでいる。
出窓には驚くほどたくさんのパソコンが置かれ、作業をするためか、その前に椅子もある。

早紀はそのうちのひとつのパソコンの電源を入れると、キーボードを打ち始めた。

(……なにをしているんだろう)

陽奈子がその背中を見ていると、早紀が思いがけないことを言い放つ。


「休みの日にはね、ここでツキシマ海運のサーバーにアクセスしていたの」
「サーバーにアクセス? ……それは不正にってことですか?」
「あたり前じゃない」


目を白黒させる陽奈子に、早紀が笑い飛ばす。
ケラケラと乾いた笑いだった。

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