極上御曹司は契約妻が愛おしくてたまらない

つまり早紀はツキシマ海運にハッキング行為を行っていたのだ。


「父が失脚して結婚が白紙になって、家族はバラバラ。それなのにツキシマ海運は何事もなかったかのようなんだもの。頭にきちゃうじゃない?」


明るい口調だからこそ、かえってネジが一本外れたかのように見える。陽奈子の知っている早紀とは違った。


「だからね、なにかせずにはいられなかったの。私が傷ついたことを思い知らせたかったのよ」


早紀は今でも貴行を想っているのかもしれない。昇華しきれなかった気持ちを抱え、それが違う方向へ向いてしまった。

(でも、早紀さんには彼氏がいるよね?)

ツキシマ海運の営業だと。客としてやって来て、早紀にひと目惚れしたと。


「彼氏がいらっしゃるんじゃ……?」
「いるわよ。ツキシマ海運に勤めている人なら誰でもよかったわ。社内の動向を知るために必要だったの。秘書室の人間ならもっとよかったんだけど」

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