極上御曹司は契約妻が愛おしくてたまらない
(来ないと思って帰ったかな。それとも最初から来なかったのかな。それならそのほうがいいんだけど)
断る手間が省けてよかったと思いつつ、念のためにとフロントの前をうろついていると、不意に「倉沢様」と声をかけられた。
「お手紙を承っております」
振り返るとそこにはホテルの女性スタッフがかしこまっていた。陽奈子が出かけるときにフロントにいることの多いスタッフだ。
(手紙って? 日本からなんてことはないだろうけど……)
家族にはこのホテルの住所を知らせてきたけれど、ここへ来てまだ数日。エアメールが届くにしては早すぎる。
不思議に思いながらスタッフが差し出した白い封筒を受け取る。
住所もなにも書かれていない。ただ〝クラサワヒナコ様〟と綺麗な手書き文字が並んでいた。
まさか、という思いが胸を衝く。あの男の顔が思い浮かんだのだ。
スタッフが去ってから開封すると中には手のひら大のメモが一枚、折りたたまれた状態で入っていた。