極上御曹司は契約妻が愛おしくてたまらない

〝三階のイタリアンレストランで待ってる〟
たった一文だけ書かれ、〝貴行(たかゆき)〟で結ばれていた。

来なかったわけでも帰ったわけでもなく、先にレストランに入ったらしい。つまり陽奈子の期待に反して待っているのだ。


「なんで……」


正直な気持ちが口からこぼれる。
どういうつもりなのかさっぱりだ。

会話が弾んでまた会いたいと思われたのならまだしも、陽奈子と〝貴行〟という男の間にはそんな甘い要素はなにひとつない。
むしろ険悪だったと言ってもいいだろう。

それなのにこうして誘われるということは――。

(やっぱり軽い女だと思われたんだ)

そうだとしか考えられなかった。深いため息が漏れる。

これまでずっとそうだった。いつも簡単な女だと思われてきた。
でも、そんなふうに思われっぱなしなのはもういやなのだ。
とにかく自分はそんな女ではないと物申しておきたい。

陽奈子は、意を決して指定されたレストランへ向かった。

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