極上御曹司は契約妻が愛おしくてたまらない
「こんなに素敵な部屋に泊まっているなら、春にマルタ島へ来たときにお邪魔しておけばよかった」
「『誘われればホイホイついていくような女じゃありません』と啖呵をきったのは、どこのどいつだ」
貴行にピンと軽く弾かれた額を両手で覆う。
それを言われると、なにも言い返せない。
陽奈子が唇を引き結んでいると、貴行はおもしろそうにクククと肩を揺らした。
大きな円形のバスタブにシャボンを含んだお湯をたっぷりと張る。
そこに貴行と向かい合うようにして浸かった陽奈子は、全身を石のように硬くしていた。というのも、貴行と一緒にお風呂に入るのは初めてだったのだ。
押し黙ったままお湯に視線を落としていると、貴行から笑顔の気配がした。
「緊張してるのか?」
「……初めてなので恥ずかしいです」
「そうは言うけど、陽奈子のすべてはもう知ってるけど?」
貴行は意地悪っぽく唇の端を持ち上げて陽奈子の顔を覗き込んだ。