極上御曹司は契約妻が愛おしくてたまらない
「俺を二十分近くも待たせる女性は初めてだ」
腕時計を見て時間を確かめてから、男はどこか愉快そうに言う。
俺を待たせるとはいい度胸だと言いたいのかもしれない。
きっと類まれなる自分の容姿を自負していて、これまでに邪険な扱いをされた経験がないのだろう。
たしかに外見は文句なし。陽奈子だって最初はぼうっと見惚れたくらい。
でも肝心の中身はというと、手放しで素晴らしいとは言い難いときている。
「座ったらどうだ?」
陽奈子を座らせようとして店員が椅子を引いてくれたけれど、遠慮して下がってもらった。
「いえ、ここに来たのは一緒にお食事をするためじゃないんです」
「じゃあなに?」
男はテーブルに肘を突き、首をほんの少し傾けた。
断られるのは想定外か。その状況をおもしろがるように目を細める。