極上御曹司は契約妻が愛おしくてたまらない
◇◇◇
青の洞門の周遊を終え、陽奈子たちは揃ってホテルへ戻ってきた。
三階部分まで吹き抜けになった開放的なエントランスへ足を踏み入れたときのこと。十数メートル離れたところで男性が、陽奈子たちに向かって手を上げたのに気づく。
(私、じゃないよね?)
うしろを振り返ってみたものの、陽奈子たちの後からエントランスを歩く人はいない。
(それじゃ、貴行さんの知り合い?)
一瞬のうちにそう考えたそばから、貴行もその男に向かって軽く手を上げた。
「なに、女連れだったのかよ」
ふたりの前までやって来た男は開口一番、陽奈子を上から下まで眺める。
まるで品定めでもされているようで、その視線から逃れるように俯いた。
「そんなんじゃない」
「じゃ、現地調達?」
「違う」
なんだか少し嫌な感じのする男だ。