極上御曹司は契約妻が愛おしくてたまらない
◇◇◇
ホテル内のレストランで夕食をとった後、陽奈子は部屋で時間を持て余していた。
貴行が連絡をよこすと言ったのが気になり、わけもなく部屋の中をうろつく。
(別に連絡を待っているわけじゃないから)
そう否定するのと裏腹に、連絡なんて来ないのではないかと考えるとチクンと胸が痛む。
それもこれも、思いのほか楽しい時間を過ごして〝しまった〟から。
バッグからデジカメを取り出し、ベッドに腰を下ろしてガイドに撮影してもらった写真を眺める。
爽やかな笑顔を浮かべる貴行の隣で、なんともいえずぎこちない笑みを浮かべる自分がいた。
(……こんなの、削除しちゃおう)
メニュー画面を押して削除ボタンを押す。
すると〝削除しますか?〟という確認メッセージが現れ、なぜか指先が惑う。
結局、陽奈子が押したのは削除ではなく〝戻る〟ボタンだった。
「やだな、本当に。なんで振り回されてるのかな、もうっ」
自分で自分が手に余り、ひとり言まで飛び出す。