極上御曹司は契約妻が愛おしくてたまらない
ここへ来てから、陽奈子はまだ一度も行っていない。
「わかりました」
貴行との電話を切ると、陽奈子は急いでバッグを掴んで部屋を出た。
気持ちが急くのはどうしてだろう。
足早にエレベーターに乗り、プールサイドのバーを目指す。フロントの前を通り過ぎ、扉を開けるところでいったん足を止めた。
息を落ち着かせるためだ。
(って、なんで私、こんなに急いで来たの?)
自分の行動が不可解でならない。
大きく深呼吸をして、ガラス戸を外に押した。
目の前にはライトアップされた大きなプールが現れる。砂浜を模したのか、波打ち際まであった。
色鮮やかなブルーラグーンのよう。
ロマンティックな雰囲気は、ホームページで見た以上だ。
乾いた風が頬をかすめるなか足を進めていくと、視界の隅に貴行の姿をとらえた。
木製のカウチチェアにゆったりと座った貴行が、陽奈子に気づいて軽く手を上げる。